10.学校での事故で、業務上過失致死罪?
資料に「学校で死亡事故があった場合、保護者が納得できず和解できないと、指示書を書いた主治医、実行した看護師が業務上過失致死罪に問われる」とあります。このような責任問題は解決されないのでしょうか?
<答>
事故はどんなに注意していても起こります。そのときにリスクマネージメント含め、みんながどんなに注意し、支援してきたかが問われるのです。事故をなくすことはできません。日常的にどんな努力と体制で臨んだかが問われます。もし罪になるのであれば公に討論されても「許すことができない過失」があったわけで、単なる感情だけの恨みであれば、裁くレベルをあげれば、無用な討論はなくなるはずです。ただ過失を認定したときに、それが個人責任なのか?が大きな問題です。
これは病院での医療過誤の討論が先行しています。責任を病院が負うのか、ライセンスや許可を出した国や行政が負うのか、というところです。もし個人の凡ミスなら民事でも個人が被告になるかもしれませんし、いろいろな人がいますから将来、刑事的な争点も出てくるかもしれません。ただし、今の学校の指示書は、もし書かれているような事例が起これば、おそらくは主治医が許可証を出さなくなるでしょう。また、いまの校内責任体制であれば(校長、主治医)現場の看護師自身に個別責任を負わせるのはあまりにも酷な話です。少なくとも看護師は医師の指示なしで動くことはできません。
主治医の多くは現場での様子は知りません。このような状態で成り立っているいまの「校内医療的ケア」は、私自身はたいへんハイリスクの「システム」だと思います。リスクは子どもたち自身が受けています。前向きに働こうとしている看護師にもリスクはあります。医療行為だから看護師責任だけに収束していこうとする今の流れに大変危機感をもちます。
医療的ケアの必要な重症児の教育はどうするのか? ケアが必要なくても医学的に難しい子どもたちもたくさんいます。ケアだけが討論の的ではない、昭和54年来のすべての子どもたちに学校教育を保障する。いや「通学」で保障していこうとする運動はまだまだ完結していません。国の教育への責任です。
NPO法人医療的ケアネット 理事長 杉本健郎
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